パソコンを使う上で誰しも一度は考えることがある。
それは、いかに快適に使えるか――つまりは、いかにストレスなく使えるかということ。
一口にストレスとは言っても実際にはいろいろあるわけで。
大別すると、精神的なストレスと肉体的なストレスに分けられるでしょー。
で、いわゆるパソコンのスペック(性能)というものは、精神的ストレスにしか関わっていないような気がする。
パソコン本体がちょっとくらい性能アップしたところで、「動作が遅くていらいらする」といった精神的ストレスを低減するくらいなのではなかろーか。
とはいうものの、この精神的ストレスをほとんど感じないところまで成長しているということは、「マイコン」の時代からコンピュータに親しんでいる人間とし てはかなり評価できる。てゆーか、純粋にすごいと思う。
一方で、たいていのパソコンでおろそかにされがちなのが、肉体に直接かかるストレスへの対策で ある。
たまにパソコンをいじるくらいならたいした問題じゃないかもしれないけど。
一日の大半をパソコンの前で過ごす人間にとってはかなり重要な問題。最近は多いはずだよね、こーゆー人。
肉体にストレスがかかるのはおもに入出力に関わる部分で、つまりはディスプレイ、キーボード、マウスということになる。
このうちディスプレイに関しては、液晶ディスプレイになることでだいぶ緩和された。CRTの頃みたいな歪みやちらつきって、今じゃ考えられないくらいだし ねえ。
マウスもだいぶ進化していると思う。光学式になり、ワイヤレスになり、多ボタン式になり、さらにはレーザーを使うに至って、かなり使いやすくなったと言え るでしょー。
ところが、旧態依然として変わらないのがキーボード。
まーね、全体のコスト削減のためにはキーボードをケチらなきゃならないって理屈はわかるけど。
でも、単体で売ってるキーボードまで、ほとんど同様というのはやはり納得がいかないわけで。
物書きを飯の種にしている人間としては、これはかなりの大問題。
実際、4年ほど前には軽い腱鞘炎にかかってしまって、四六時中痛みに悩まされた。
そのときに思い切って購入したのが、現在も愛用しているKINESISキーボードなのである。
どんなキーボードかは写真を見てもらえば一目瞭然だろーけど、とにかく個性的な設計のキーボードであることは間違いない。左右が分かれて全体がアー チ状になっている。これはまあ、マイクロソフトのNaturalキーボードも同じだけど、何より特徴的なのは「お椀 型で手にぴったりフィット」「親指で攻めまくる」という点に尽きる。
まず、お椀型。
いいよね大きすぎず小さすぎず手のひらにぴったり収まるお椀型って――と思わずうっとりしてしまうほ どに計算し尽くされたこのフォルム。キー部分が窪んでいて、指をほとんど動かすことなくキータッチが可能なのだ。写真ではわかりにくいかもしれないけど、 ひとつひとつのキーは位置だけでなく向きも違っていて、当然のようにキートップの形状までそれぞれ違っている。ここまで凝っていると、人によっては偏執狂 的に受け止める向きもあるかもしれないけど、エルゴノミックキーボードを謳うからにはこのくらいやって欲しいところ。
もうひとつの特徴は、親指を多用するということ。
人間の手というものは、とくに障害がない限りは親指がもっとも力強くタフである。にもかかわらず、たいていのキーボーでは親指の役割はスペースキーを押すだけ。かわりに小指が酷使されるようになっている。
どう考えてもおかしい。そりゃー腱鞘炎にもなるわけである。
で、この「キーボードの常識」にエルゴノミックに反旗を翻したのがKINESISキーボードというわけ。もちろん他にもいろんなエルゴノミックキー ボードはあるけれど、日本国内での普及率を考えると反乱軍の総大将くらいの位置にはいるかも。KINESISに比べれば、Naturalキーボードがエル ゴノミックを名乗るなんておこがましいほどである。
さて、ではどんなキーを親指で攻めるのかとゆーと。
Enter、Space、BackSpace、Delete、Ctrl、Alt、Home、End、PageUp、PageDown――じつにこれだけの キーを親指で操作するようになっていて、日本語入力を生業にしているものにはありがたいことこの上ない。
方向キーも人差し指と中指で押せるところにあるので、普通のキーボードみたいにこれらのキーを押すために手首の位置を変えなくても済む。慣れるまでは一週 間くらいかかって、その間はかなりとまどうかもしれないけど、いったん慣れてしまえば本当のブラインドタッチが可能になるのだ。てゆーか、思考とキー操作 が完全に一体化する。考えることは指を動かすことであり、逆に指を動かすことで思考が紡がれる。このあたりの感覚はピアノをやっている人だとわかるかもし れない。
それともうひとつ、他のキーボードにはないおもしろい特徴もある。
それは、裏に角度変更用のツメがないということ。たいていのキーボードにはあるでしょ、あのツメって。
それがない。裏には滑りにくいゴム足がついているだけ。
つまり、そんなよけいなことをしなくても、最初から打鍵しやすい角度で作られてるって証拠なんですな。
ただ、いくつか問題がないわけでもない。
まずはでかい。そして高い。4万円から5万円くらいはする。あと、これは人によりけりだと思うけど指が届きにくいキーがある。標準添付のリストレストがす ぐダメになる。といったあたり。
でかいということに関しては、性能とスペースのどちらを取るかというトレードオフの問題でしょー。おすすめはでかいデスクを買うこと。最近はディス プレイもほとんど液晶だし、昔よりもキーボードに割けるスペースも広くなってるんじゃないでしょーか。
値段はまあしょうがない。これだけ凝ったものである以上、そのくらいはして当然。てゆーか、使ってみれば価格以上のメリットがあるとわかるわけで、 必要なのは最初の度胸だけでしょう。
指が届かないという問題については、私は手が小さいせいか、左右の一番外側上のキーに小指が届きにくい。もちろん、手首を軽く浮かせるなりずらすな りすれば簡単に届くけど、それではせっかくのエルゴノミックキーボードがもったいない。
とはいうものの、右外側上の「長音・マイナス」キーは、日本語入力では非常によく使う。IT関連の記事でカタカナ用語を使うとなればなおさらである。
で、ここで役立つのがRemap(リマップ)機能である。KINESISキーボードは機種に よってはメモリを内蔵していて、キーの機能を入れ替えることができるのだ。
私の場合は、下記のようにリマップしている。左側がキートップ、右側が割り当てた機能と思いねえ。
Space → Enter
Enter → BackSpace
BackSpace → Space
↑ → →
↓ → ←
→ → ↑
← → ↓
=+ → Esc
;: → ?_
¥| → ;:
?_ → =+
といった感じ。これにソフトウェアで左AltにATOKオンオフを割り当てれば、日本語入力はかなり快適になる。
最後のリストレストについては、粘着テープが溶けやすいみたいで、すぐにデロデロになってしまう。これをはがすのは一苦労だ。で、標準品の後釜に 使っているのが、サンワサ プライのジェルノートパッド。これは左右組で500?600円くらいで買えるノートパソコン用パッドなんだけど、じつ にKINESISキーボードにぴったりなのだ。裏面が滑り止めみたいな素材になっているので、とくに両面テープを貼らなくてもただ乗せるだけでOK。派手 にキータッチしてもずれないし、なかなか優れものである。
ちなみにKINESISキーボード購入はぷらっとホームにて。
他にも輸入業者はあるかもしれないけど、ある程度の信頼が欲しければ今でもぷらっとが一番でしょーきっと。
ちゃんとKINESISのコーナーがあるのは、国内ではここくらいなものだしねえ。
もっとラクチンに入力したいという欲求がある人にはぜひお勧めしたい逸品なのである。

