紙の書籍と電子書籍のどちらが好きかと問われれば圧倒的に紙の方が好きだと答える私なのだが、もちろん電子書籍にもいいところはたくさんあると思ってい る。
まず、かさばらないということ。これは紙書籍には望むべくもないすばらしいメリットだろう。 蔵書というほどのものではないが、私の部屋にもそれなりの量の書籍がある。今はおもに文庫が占めているが、ざっと三千冊程度はあるだろうか。数年前にコ ミックを二千冊程度処分したにもかかわらず、いつの間にやら増えてしまった。面倒なのできちんと数えたことはないが、もしかしたらもっとあるかもしれな い。
これだけあるとさすがに収納場所には苦労することになる。壁をぶち抜いて作りつけの本棚を自作したり、天井まで届く大型書棚を購入したりと、労力面で も金銭面でもけっこうたいへん。それでも追いつかずに床や机の上に積み上がった本がいっぱいあるという状態なのだ。
そーゆーわけで、いくら購入してもスペースをとらない電子書籍というのは、我が家の住宅事情からするとありがたい存在なのだ。わりと新しもの好きな私は、 電子書籍サービスを黎明期に近い頃から愛用していて、これも数百冊のオーダーになる。ほんと、我ながら後先考えずに買い込んだものである。 何を考えなかったかというと、電子書籍を読むための端末である。
購入するときは、その時点で使っているPDAで読めればいいやという軽い気持ちだったのだ が、この飽きっぽい性格の人間がそうそういつまでも同じPDAを使うわけがない。とゆーか、そもそもPDA自体が寿命を迎えちゃうでしょう、数年もすれ ば。 ま、いずれの形式の電子書籍であっても、PCでは読めるのだからさほど問題はないのかもしれない。
とはいうものの、やはり電子書籍はモバイル環境で読んで こそ最大のメリットがあるといえる。 さて、ここからが本題。 最近私はPDAを持たない。 というのも、これまでPDAに求めていたほとんどの機能が携帯電話で賄えてしまうからだ。私が使っているのはauでカシオのA5403CAという端末。充 電器がUSBクレードルを兼ねているので、まさにPDA感覚で扱える。しかも、カシオのMySyncSuiteと併用すれば、スケジュール・タスク・住所録を機種に最適な形で管理できるし、携帯で 撮影した写真も管理できる(滅多に撮らないけど)。PCの地図ソフトから画像を切り出して転送、取材先までの地図を携帯に収めるといったこともできるの だ。 音楽に関しては専用のMP3プレーヤーがあることだし、あとは電子書籍が読めれば文句ないというところだ。
ところが、このA5403CA、これまでは読書端末としてはいまいちだったのだ。もちろん、携帯向けの電子書籍サービスは増えてきている。こうしたサービ スを利用すれば、それなりに電子書籍を楽しむことができるだろう。
しかし、悲しいかな。携帯電話向けの電子書籍サービスでは、ラインナップがそれほど豊富ではない。他のキャリアはどうか知らないが、auの場合はそうなの である。しかも料金がばかにならない。サービス利用料にくわえ、書籍そのものの料金、さらにはパケット代までかかってしまう。毎月の携帯電話料金が 2500円で済んでいる私にとって、これはあまりありがたくない。
それに、これまで購入してきた多くの資産――つまり電子書籍を読めないのだ。PDFやドットブック、XMDFなんかを携帯で読みたいなどと贅沢を言うつも りはない。ただ、できればテキスト形式の電子書籍くらいなら読めてもいいではないかと思うのだ。
そんなわけでA5403CAで動作する縦書きテキストビューアを長いこと探していたのだが、先日、ようやく見つけることができた。 それが「携帯書房」(株式会社ライフメディア提供)であ る。テキストファイル自体を個別にアプリ化してしまおうという、PCソフトにはないユニークな発想。実は携帯書房そのものはずいぶん前から知っていたのだ が、2004年7月からアプリ生成ツールを無料で利用できる(ただし非営利目的に限る)ようになっていたことは知らなかった。
結論。 これはすごい。 ものすごいソフトである。 Java2の実行環境さえあればそれだけでプログラムが動き、きわめて簡単にEZアプリを作成できる。できたアプリをMySyncで転送すればパケット代 もかからない。青空文庫のテキストなら書籍代も無料だ。 これだけのソフトウェアを無料で提供してくれた株式会社ライフメディアには心から感謝したい。
ただ、公開されているマニュアルが旧バージョンものであり現状と異なることと、MySyncと併用するにはちょっとしたコツがあることには注意が必要だ。
さて、それでは携帯書房のア プリ製作ツールである「携帯書房ビルダー」(Ver.1.3.2)を使ってみよう。
これは非営利目的に限って無料で利用できるLimited Editionなので、その点には注意されたし。
まずはダウンロードとインストールであるが、ダウンロードは問題ないだろう。このページの 使用許諾条件に同意すればすぐにもダウンロードが始まる。それとマニュアルもダウンロードしておこう。後述するようにこのマニュアルは初期バージョンに対 応したものなので、いくつか読み替えは必要なのだが、ライセンスなどに関してきちんと記述してあるので必ず目を通すこと。
ファイルをダウンロードできたら、今度はインストール。
マニュアルを読むと、別途Java2実行環境とKJX作成ツール(EZアプリの開発キットの一部ですな)が必要とあるが、実はKJX作成ツールは必要ない。携帯書房ビルダーの現バージョンではKJX作成ツールと同等の機能を 組み込んでいるため、わざわざ用意する必要がなくなったのだ。つまり、携帯書房ビルダーを実行するのに必要なのはJavaの実行環境だけということにな る。
Javaのダウンロードはこちら。現在のバージョンは1.4.2_06で、このバージョンでとくに問題ない。ちなみに必要とされているの は実行環境――つまりJava Runtime Environment (JRE)だが、もちろんSDKの方を選んでも問題ない。まあ、他に用途がなければ重いだけなのでJREにしておこう。
JREのインストールは非常に簡単で、指示にしたがって進めるだけですぐに終わる。パスを通す必要もない。
Javaがインストールできたら、携帯書房ビルダーをインストールしてみよう。
といっても、とくに作業は必要ない。解凍したファイルを適当なフォルダに置いて、「ShoboToolSWT.jar」をダブルクリックして実行するだ け。さすがにショートカットくらいは自分で作っておいた方が便利だろうけど。
これだけでインストールは完了だ。携帯書房ビルダーはレジストリを使わないので、状況に応じて(気分によって)ファイルを置く位置を変えてもまったく問題 ない。
携帯書房ビルダーが無事に起動したら、次は初期設定である。
ただし、ここで注意が必要だ。マニュアルでは「原稿フォルダ」「アプリ出力フォルダ」「中間出力フォルダ」「ログ出力フォルダ」 「KJXArchiver.jarの場所」の5つのフォルダ位置を指定することになっているが、現バージョンでは「原稿フォルダ」「アプリ出力フォルダ」 「中間出力フォルダ」の3つだけとなっている。先述のようにKJX作成ツールは不要になったし、ログ出力も自動的に行われるようになったからだ。ちなみに このログファイル、自動的にローテートされるので容量が増えすぎて圧迫することはないそうだ。
それと、EZアプリを作成する場合には、「設定」―「ツール設定」の「作業ファイル設定(ezplusア プリ生成の中間作業ファイルを保存する)」にチェックをすること。これには次のような理由がある。
ダウンロード用に公開するEZアプリには2バイトのチェックバリュー(CRC)というものを付加することになっていて、携帯書房ビルダーで生成したEZア プリ(「アプリ出力フォルダ」にできあがるファイル)にもこのチェックバリューが付加されている。
ところが、MySyncで転送したりエミュレータ上で実行する場合には、このチェックバリューがあると実行できない。外した状態にしておかなければならな いのだ。携帯書房ビルダーでは、そのために「中間出力ファイル」を残すようにしているのだ。中間出力ファイル(「中間出力フォルダ」にできあがるファイ ル)はチェックバリューを付加する前の状態なので、MySyncを用いて転送する場合には必ずこちらのファイルを使うようにしよう。
なお、EZwebのチェックバリューについては、こちらを参照のこと。※以上の細かい注意点については、株式会 社ライフメディアのご担当の方に親切かつ詳細な説明をいただきました。この場を借りてあらためてお礼申し上げます。あとは、マニュアル通り にやれば、まあ問題ないだろう。難しいことはまったくない。ちなみに、私はこの携帯書房ビルダーでまっ先に「日本沈没」のアプリを生成してみた。いわずと しれた小松左京の名作で、確か電子文庫パブリで 購入したと思う。テキスト形式の電子書籍の真価を発揮したというところだろうか。
最後に、携帯書房ビルダーそのもののライセンス――つまり営利目的に用いる場合はきちんと契約すること――と、当たり前だが電子書籍そのものの著作権につ いてはしっかり守っていこう。電子媒体の書籍が普及していくためには、コピーを防ぐ技術もそれなりに有効だとは思うが、やはり利用者自身の意識の高さが何 よりも大切だと思うのだ。